後立山(長野/富山) 蓮華岳(2798.7m)、針ノ木岳(2820.7m)、小スバリ岳(2740m)、スバリ岳(2752m) 2024年6月15日  カウント:画像読み出し不能

所要時間  1:55 第一駐車場−−2:00 登山口−−2:21 車道を離れる−−2:58 大沢小屋−−3:20 針ノ木雪渓−−4:24 マヤクボ沢出合−−5:00 針ノ木峠−−5:50 蓮華岳 6:15−−6:53 針ノ木峠−−7:42 針ノ木岳 8:08−−8:20 マヤクボノコル−−8:34 小スバリ岳−−8:40 スバリ岳−−8:53 マヤクボノコル 9:01−−9:14 マヤクボ沢出合−−9:35 夏道 9:40−−9:57 大沢小屋−−10:04 篭川渡渉−−10:10 林道終点−−10:23 車道−−10:27 水浴び 10:33−−10:38登山口−−10:43 第一駐車場

場所長野県大町市/富山県中新川郡立山町
年月日2024年6月15日(土) 日帰り
天候晴後霧
山行種類残雪期の一般登山
交通手段マイカー
駐車場扇沢駅直下の有料駐車場より下に市営無料駐車場あり。ただしハイシーズンには早朝に満車になるので注意
登山道の有無マヤクボノコル〜マヤクボ沢出合以外は登山道あり
籔の有無藪漕ぎのレベルではないが林道終点〜大沢小屋荷揚げ用作業道は笹等が登山道にはみ出した区間あり
危険個所の有無雪山経験者なら無しと言えるが、夏山専門登山者にとっては針ノ木峠直下の急雪面、針ノ木峠〜針ノ木岳間の急雪面トラバースが滑落の危険あり。経験と装備の両方が揃わない場合は雪が溶けて夏道が完全に出てから登るべき
山頂の展望いずれの山頂とも晴れれば大展望
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コメント先週の白馬岳に続いて残雪コースを選択。今回は体力テストを兼ねて蓮華岳、針ノ木岳、小スバリ岳、スバリ岳と4山を登った。往路は針ノ木峠に出て蓮華岳を往復して針ノ木岳へ登り、マヤクボノコルに荷物をデポして空身でスバリ岳を往復してマヤクボ沢を下った。今年は残雪が少なく大沢小屋荷上げ道の篭川右岸から左岸へ道が移る地点のスノーブリッジが消えている可能性が高く、篭川を渡れない可能性があり往路は夏道を使った。帰りに荷上げ道を通ってみたら予想通りスノーブリッジは消えていて橋もまだかかっていなかったため、上流の砂防ダム直下の流れが分散した箇所を渡渉。最後の一番広い流れには何とアルミ梯子がかけられていて、正式な橋がかかるまで迂回路として利用可能と判明した。針ノ木峠〜針ノ木岳の急雪面トラバースは健在でまだピッケルが必要。マヤクボ沢は雪解けが進んでカールの底経由で登るルートは数mだけ雪が切れてハイマツが出ていた。急雪面を登ってカール北斜面に出るルートはまだ雪あり。夏山シーズンと残雪シーズンの端境期ですれ違った登山者は10名前後しかいなかった


針ノ木峠〜針ノ木岳間のトラバース区間。まだ夏道は出ておらずアイゼン、ピッケルが必要


夜中2時前に第一駐車場を出発 扇沢駅。裏手の車道の法面は工事中
ゲート横から登山道に入る 関電トンネル入口
トンネル入口手前の車道から登山道に入るのも久しぶり 最初の沢。伏流する流れの音が聞こえた
鳴沢。僅かに残雪があった 湧き水
赤沢。大量の水が流れ渡る場所を選ぶ必要あり 荷上げ道入口
大沢小屋 標高1800m付近で篭川河原に出る
標高1830m付近で雪渓に乗る アイゼン装着
標高1850m付近。左岸から流れた水で雪が汚れている 標高2080m付近。午前4時前から明るくなり始める
マヤクボ沢出合。今回は蓮華岳を優先して針ノ木峠方面へ。早くもガスが上がってきた
標高2350m付近 標高2420m付近。針ノ木峠が見えてきた
稜線に朝日が差す 針ノ木峠
針ノ木峠から雪渓を見下ろす。後続は見えない アイゼンと軽ピッケルは峠にデポ
針ノ木小屋を見下ろす マヤクボ沢の雪は繋がっている
標高2630m付近 キバナシャクナゲ
標高2680m付近 2754m峰を越えると残雪あり。でもアイゼン不要
ミネズオウ 2750m肩から見た蓮華岳
ウラシマツツジの花 大沢を見下ろす。雪が続いているか不明
蓮華岳西の肩 蓮華岳東の肩。山頂標識は新調されていた
蓮華岳から見た360度パノラマ展望写真(クリックで拡大)
蓮華岳から見た後立山北部
蓮華岳から見た常念山脈、槍穂
蓮華岳から見た穂高、槍ヶ岳
蓮華岳三角点 蓮華岳から見た種池山荘。もしかしたら夏道を通れるかも
蓮華岳から見た七倉岳 針ノ木岳に向けて出発
ウメハタザオ。先週の白馬岳でも見た コマクサ。まだ葉が出てきたばかり
イワベンケイ ミヤマキンバイ
赤沢出合を見下ろす。スノーブリッジが使えるか微妙 ショウジョウバカマ
針ノ木峠から針ノ木岳方面を見ている コメバツガザクラは終わりに近い
テント場西端は雪が消えていた コイワカガミ
ミヤマダイコンソウはまだほとんど咲いていない チングルマもまだ咲いていない株が多い
ツガザクラ 標高2640m付近。まだノーアイゼン
標高2660m付近で傾斜が強まる アイゼン装着
短い無雪区間を越えると急登 標高2690m付近から振り返る
標高2690m付近から前方を見る 2740m鞍部でトラバースを終えて稜線に出てアイゼンを脱ぐ
信州側はだいぶガスが上がってきた 鞍部から夏道を上がる。稜線西側は雪無し
雪壁は登らず西端の雪の境界を登った 山頂直下
針ノ木岳山頂 山頂のチシマアマナ。先週の白馬岳でも見た
針ノ木岳から見た南〜北西の展望(クリックで拡大)
針ノ木岳から見た立山〜剱岳
針ノ木岳から見た五色ヶ原。小屋が写っている ミヤマオダマキの蕾
ミヤマキンバイ マヤクボノコルへ下り始める
3週間前の雪は完全に消えていた マヤクボノコル
マヤクボノコル西側の幕営地 まだ雪がコルまでつながっている
荷物をデポしてスバリ岳に向かう スバリ岳まで雪は全く無い
ハクサンイチゲは今回は咲いていた ミヤマキンバイ
クモマスミレ ミヤマシオガマ。てっぺんの花が斜め上を向いているのが特徴
イワウメ 標高2700m付近
小スバリ岳とスバリ岳 小スバリ岳山頂
スバリ岳の最後の登り スバリ岳山頂標識は古いまま
この岩場が正確なスバリ岳山頂 赤沢岳方面への縦走路にも雪が見えない
黒部湖を見下ろす 針ノ木岳はガスでずっと見えなかった
ミヤマダイコンソウ。開花しているものはほとんど無かった ミヤマダイコンソウの株
マヤクボノコルから下山 カールの底へ向かって下る
振り返る カールの底から左へ向かうと数mだけハイマツが出ていた
標高2520m付近。スキーヤーが上がってきていた 標高2350m付近から振り返る
標高2350m付近から針ノ木雪渓を見下ろす 針ノ木峠に向かうらしい4人が見えた
マヤクボ沢の出合から下流を観ている 標高2070m付近。幕営装備の大ザックの若者が登っている
標高2050m付近。チェーンスパイクの男性が上がっていった 左岸の高い位置にはミヤマキンポウゲが見えた
ミネザクラでいいか シラネアオイ
サンカヨウ。たくさん咲いていた 夏道入口
オオバキスミレ イワカガミ
ベニバナイチゴ 夏道入口から雪渓を見上げる
カラマツソウ アカモノ
ツマトリソウ 雪渓末端は標高1750m付近
まだ梯子が設置されていない オオカメノキ
大沢小屋 帰りは荷上げ道を下ることに。笹のはみ出し多し
新しい目印 ズダヤクシュ
オオバミゾホウズキ ヤマガラシ
キジムシロの花 キジムシロの株
橋が架かる場所。水量多く飛び石でも渡れない 上流の砂防ダム直下で流れが分散した箇所を渡渉
最後の一番大きな流れに梯子がかかっていた! これは正式な橋を分解した部材
エンレイソウ 堰堤にかかる長い梯子は設置済みだった
赤沢出合の残雪は僅か キヌガサソウ
ネコノメソウ。まだ開花前だった なんと標高1560mの林道脇にチングルマ発見! 花はおしまい
チングルマの近くにミヤマクワガタがあったのには二度びっくり! 林道は既に緑が濃い
タニウツギ ベニバナイチヤクソウ
林道入口 タチカメバソウ
ミヤマキンポウゲと同じ花 ウマノアシガタではなくミヤマキンポウゲでいいか?
ここで水浴び。夏場は水が涸れている 扇沢駅。電気バスが並んでいるので客は少ないようだ
夜中の工事場所 ゲート
有料駐車場はガラガラ ノビネチドリ
オドリコソウ クサノオウ。有毒とのこと
第一駐車場はかろうじて空きがあった


 今年は大型連休以降は週末は天候に恵まれて今週末も北アルプスは好天予報。先週は標高差1700mの白馬岳をクリアできたので、今回はもう一段体力レベルを上げるルートで体調の確認をすることに。大天井岳を考えたが今回は湿った南風が入る気圧配置であり、山頂でガスがかかって何も見えない可能性がある。せっかく5時間かけて登って真っ白では残念なので、ガスっても許容できる針ノ木岳を選択した。ここだけでは労力が不足するため蓮華岳を追加。これで累積標高差は約1700mでアイゼンを付けての行動時間が長く、より負荷が重くなる。おまけでスバリ岳を追加すれば累積標高差1800mを越えて白馬岳以上になり、もう100mで鹿島槍と同等になる。最終的には鹿島槍日帰りができる体力まで戻すのが目的であり、その前段階としてはちょうどいいだろう。それに実際の疲労度合いでルートのカットが可能であり、最悪の場合は蓮華岳のみかもしれない。今回は今年未踏の蓮華岳を優先することにした。

 金曜日は早めに会社を上がって扇沢の無料第一駐車場着は午後7時過ぎ。びっくりするほどガラガラで1割くらいしか埋まっていないが、山も観光も雪のある時期と夏休みシーズンの端境期であり、登山者も観光客も少ないのであろう。一番奥の区画に車を入れて酒を飲んで寝た。睡眠時間は5時間以上確保できるので寝不足の心配は無いが、真夜中でも工事の音が続いているのが気になった。扇沢駅から関電トンネルへ繋がるアクセス道路脇のがけ崩れ防止工事らしい。日中は電気バスの運行があるので夜中しか工事ができないようだ。

 午前1時過ぎに起床して飯を食って午前2時前に出発。前回は藪の中でウェストポーチを落として捜索に時間と体力を使ったので、今回は出発時にバックルがしっかりかみ合っているか入念に確認した。まだ駐車場はガラガラのままで夏山シーズンとは大違いだった。

 ルートであるが、私は冬道として使われる大沢小屋荷上げ道を夏山シーズンでも使うのだが、この時期は問題がある。この道は篭川本流を渡るのだが、ここにかかる橋は7月中旬に設置されるのが通常パターンであり、残雪期は赤沢から押し出した大量のデブリで篭川本流にかかっているスノーブリッジを利用する。ところが今年はデブリが非常に少なくて3週間前でギリギリ使える程度しか残っていなかった。おそらく今はもう残っていないと予想され、雪解け水で増水した本流は橋無しでは簡単には渡れない。また、その下流側の堰堤に梯子がかかっているかもリスクの一つで、梯子が無いと高巻きが厄介だ。当然だが事前にネットで調べたが、針ノ木岳の記録は全て夏道経由で荷上げ道を使った記録は皆無で情報は得られなかった。これらのリスクを考慮して今回は夏道経由で登ることにした。

 前回(3週間前)は駅の建物内の照明が点灯していたが今回は真っ暗。その代わりに駅の裏手の斜面で行われている工事の照明が明るかった。ゲート脇の登山道に入って久々に最後まで車道ショートカット道を上がる。もうニリンソウは無くなっていたが、タチカメバソウはまだ咲き残っていた。オドリコソウも発見。地面を這う黄色い花はキジムシロだ。車道から登山道へ入ってすぐにはベニバナイチヤクソウ。まだ真っ暗なので撮影は帰りだ。

 夏道にはもう雪は無く横断する沢にもほぼ雪は無かったが、普段は涸れている沢も雪解け水で水が流れていた。特に赤沢は渡る場所を選ばないと靴が水没しそうなほど豊富な水量だった。年中無休の湧き水の水量はいつもと同じで、地下を流れる水の量は変わらないらしい。

 大沢小屋手前で荷上げ道が合流するが、残雪期には使われていたようで思ったよりも荒れている感じは無かった。もしかしたらスノーブリッジがまだあるかもしれないので、帰りはこちらを歩いてみるのも手か。何しろ荷上げ道は距離が短いし沢沿いで涼しいのが利点だ。もしスノーブリッジが無い場合、帰りなので登山靴が水没してもいいので強引に篭川を渡ってもいい。どうするかは帰りに考えよう。

 夏道から残雪期専用の沢へ下る入口付近ではまだ真っ暗な時間帯で篭川に残雪があるのか見えないが、沢の流れの音が激しいのでおそらく雪は消えていると判断してそのまま夏道を進んだ。傾斜が急になってから眼下に雪が現れるが、ほぼ法面で安全に雪渓に下るのは無理なのでこのまま夏道を進んで、標高1800m付近で篭川の河原に出た。ここで水を補給。

 夏場ならここからしばし広い河原歩きだが、今は雪が広範囲を覆っていて狭い範囲だけ直線状に雪が消えているのでそこを歩く。アイゼンを付けるのが面倒だから(笑) でも雪が無いのは100mくらいでアイゼンを付けて雪歩き開始。気温は高めとは言っても夜明け前であり雪はそこそこ締まって歩きやすい。すぐに雪渓中央部が真っ黒に見えることに気付き、まさか雪が消えて流れが出ているのか?と思ったら、3週間前に見た左岸からの大水により本流が雪壁化した箇所で、大水で流れてきた土砂で雪の表面が汚れているだけだった。あのときはまさに雪壁だったが今は雪解けが進んで傾斜が緩い箇所があるので雪渓中央部でも簡単に乗り越えることができた。

 標高2070m付近の「ノド」直下で傾斜が一時的に急になり、振り返ると雪渓末端近くまで見えるようになるが、後続の光は全く見えない。まだ真夏ではないので出発時刻が私のような真夜中の登山者は少ないのだろう。先週の白馬岳はちょっと例外的だったか。

 ノドを越えて傾斜が緩むとマヤクボ沢出合までそのまま緩い傾斜が続く。まだ日の出前だが今日は湿気が多いためか早くも稜線に雲がかかるようになり、谷筋にガスが出てきた。これだと山頂はガスで真っ白かな。展望が見えないのは残念だが涼しく歩けるのは助かるし、花を見る分には天気は無関係だ。

 今回は今年未踏の蓮華岳を優先してマヤクボ沢出合は直進して針ノ木峠方面へ入る。昨日のものと思われる下りのトレースが続いているが、昨日も天気が良く気温が高かったため雪解けが進んで足跡が判別しにくい箇所もあった。歩幅が合わない下りの足跡を利用するよりも、足跡が無くても汚れた古い雪を辿った方が雪が締まって歩きやすい。標高2350m付近で雪渓が2つに分かれていたが、マヤクボ沢出合以上では基本的には左側の方が枝沢が多いので幅が広い右に進路を取ったものの、傾斜が異常に急であり針ノ木雪渓本流ではないのが明らかで左の細い雪渓に乗ると正常な傾斜で正しいルートに間違いなかった。

 針ノ木峠が見えてもなかなかたどり着かないのがもどかしい。いつの間にかガスが切れて上空は高い薄雲のみに変わり、西側の斜面上部に朝日が当たって日の出を迎えたことが分かった。

 出発から約3時間で針ノ木峠に到着。ここから蓮華岳方面の登山道は最初から雪は全く無く、この状態なら蓮華岳までアイゼンが必要な個所は皆無であることが確定し、峠にアイゼンと軽ピッケルをデポした。ザックもデポして空身で往復しようかとも考えたが、山頂までここから1時間かかるので山頂で小休止が必要だろうし、稜線に出れば南風が当たって体感温度が下がって防寒装備はあった方がいいだろうとザックは担いでいくことにした。

 雪が消えた登山道脇にはコイワカガミやミヤマキンバイの花が咲いていたがコケモモはまだであった。キバナシャクナゲは咲いていたがハクサンシャクナゲはまだ。高度が上がるとマヤクボ沢の残雪状況が見えるようになり、カールの底付近で雪が消えかかっているがまだ大丈夫そうなので、蓮華岳到着時に体力的にまだ余裕があった場合は針ノ木岳に登り、帰りはマヤクボ沢を下ることに決定した。

 2754m峰に達するとようやく蓮華岳山頂が見えるようになり、小鞍部の平坦部分に残雪が登場するが、雪は緩んでいるし傾斜が無いのでアイゼン無しで問題ない。この付近ではミネズオウが咲いているのを発見。これまで蓮華岳では見た記憶が無いのでラッキーな気分だ。ウラシマツツジの花も発見。どちらの花も大きさはかなり小さいので、普通に歩いていたのでは気付かないかもしれない。この付近はコマクサが最も多い場所だが、まだ葉っぱが出たばかりで花はしばらく先になりそうだった。

 2730m鞍部付近には大沢に続く雪渓上端の残雪が僅かにあるが、これもアイゼン不要だった。大沢の傾斜は相変わらずで、雪壁に近い急傾斜より下部の大半が見えないので、今でも雪がつながってるのかは不明だ。

 雪が無い砂礫の斜面を上がっていくと白い花を発見。先週の白馬岳で葱平で見た花と同じウメハタザオだ。イワベンケイは咲き始めであった。クモマスミレの葉っぱはまだ出ていなかった。

 登り切って傾斜が緩むと祠が登場して蓮華岳山頂の西の肩に到着。雪渓を登っている時に見えていた稜線を覆う雲は晴れて爺ヶ岳や鹿島槍ヶ岳も見えているが、湿気が多く空気の透明度はイマイチで、南側で見えているのは穂高が限界だった。北側の白馬岳周辺も霞んでしまっていて、妙高火打等の北信の山々や志賀高原の山々は全く見えなかった。夏のような気圧配置なので仕方ない。爺ヶ岳西面の残雪はかなり減って谷筋にしか白いものは見えず、もしかしたら柏原新道はそろそろ安全に歩ける状態になっているかもしれない。

 三角点は東の肩にあるのでそちらに移動すると山頂標識が新しくなっていた。最近の北アルプスはこのタイプの標識に統一されつつある。南風がややあるので山頂北側直下で風を避けながら休憩。ここまで4時間の歩きだったが疲労度はまだそれほどではなく、針ノ木岳にも登れそうで一安心。軽く飯を食って出発。

 2750m肩に登り返して篭川を見下ろせる位置で赤沢出合付近の残雪を確認すると、どうにか雪がつながっているようにも見えるが、何せ距離があるので肉眼では確認できず、デジカメの最大望遠で液晶画面越しに見ているので良く分からなかった。帰りに大沢小屋荷上げ道を下るかどうか悩ましい。

 針ノ木峠に到着してアイゼンと軽ピッケルを回収。この先はしばらくアイゼン不要なのでどちらもザックへ。雪渓を見下ろすがまだ登山者の姿は見えず、雪渓の足跡は私のものだけだった。蓮華岳往復で休憩込みで約2時間かかっているが、それでもまだ後続登山者はやってこなかった。この分では針ノ木岳で休憩してもまだ登山者は上がってこないかな。

 針ノ木峠付近の針ノ木岳側の方が蓮華岳方面よりも花の種類が多く、チングルマとミヤマダイコンソウ、ツガザクラで既に開花した株があったのにはちょっと驚いた。コメバツガザクラは逆にもうおしまいの時期だった。

 テント場はまだ半分以上が雪に覆われているが、西端の数張分のスペースは地面が出ていた。

 標高2640m付近で残雪が登場するが、まだ傾斜が緩いのでノーアイゼンのまま乗っていく。短距離だが雪が無い岩場を横断して岩の基部に出ると傾斜が出てきたのでアイゼンを付けてピッケルを手にする。この付近は夏道よりも高い位置である。ここから雪の急斜面をまっすぐ上に登ってトラバースを開始して島状に出た岩場の上側を通過する。今は雪が適度に緩んで固く締まった時間帯よりも歩きやすく、おそらく前日のものと思われるトレースがずっと続いていてステップが切れているのも助けになった。今回は軽ピッケルで大丈夫だろうと予想したが大当たりであった。

 2740m鞍部で雪のトラバースが終わってアイゼンを脱いで夏道に乗る。稜線西側に道が移ると雪は全く無くて夏山の光景だ。この先の肩にはまだ雪が残っていて3週間前は雪壁だったが、今は雪解けが進んで傾斜は緩くなっていた。ここは夏道はまだ雪の下だが、雪と無雪の境界の石が積み重なった斜面を登った。下りなら雪の上を歩いた方が楽だろう。

 ここを越えれば山頂は目の前で無人の針ノ木岳山頂に到着。まだ山頂はガスに覆われていなかったが信州側からガスが上がり始めて東側の視界を塞いでいた。まだ西側は晴れているので裏銀座から薬師岳、立山、剱岳と展望が広がっていた。まだ午前8時でこの状況は真夏の時期よりガスの出が早いと言え、それだけ湿った南風が入っている証拠だ。

 針ノ木岳山頂は花が多いが、さすがにまだ時期が早いので種類は少ない。最も多いのが黄色のミヤマキンバイで、白いチシマアマナが少し混じる。ミヤマオダマキはまだ芽吹いたばかりだが大きな蕾が付いていた。ミヤマシオガマは芽吹き直後だった。これらの花が咲くのは1ヵ月後かな。その頃は高山植物の開花のピークだ。

 針ノ木岳でも大休止。東側はガスが覆っているが頭上はまだ晴れているので日差しが強く麦藁帽子が役立つ。日焼け止めを持ってきているが、この分ではガスがどんどん上がってきてすぐに日差しが無くなりそうで、顔に日焼け止めを塗るのは止めておいた。山頂では約30分の休憩だったがその間に登山者が到着することは無かった。

 休憩を終えてマヤクボノコルに向かう。3週間前は僅かだが厄介な場所に雪が残ってアイゼンを使ったが、今回はその雪も完全に消えていて普通に通過できた。石が積み重なった登山道は歩きにくく、逆に雪に覆われていた方が楽かもしれない。

 マヤクボノコルに到着。まだ体力に余裕があるのでスバリ岳を往復することにして、コルに荷物をデポして少しの防寒装備を持って向かう。コルから小スバリ岳の稜線は高山植物の開花がいつも早く、3週間前はミヤマキンバイとコメバツガザクラであったが、今回はそれに加えてハクサンイチゲ、クモマスミレ、イワウメ、ミヤマダイコンソウ、ミヤマシオガマが咲いていた。

 傾斜が緩むと小スバリ岳直下で、縦走路は小スバリ岳西側を巻いてしまうがせっかくなので山頂を踏むことにして、石が積み重なった斜面を登って岩の山頂へ。ここは地形図記載の山ではなく日本山名事典記載の山なので山頂標識は無く、てっぺんの岩に石が乗っているだけ。周囲はハイマツしか無いので遮るものは無いが、今はガスがかかって展望は無かった。

 縦走路に戻ってスバリ岳へ。小スバリ岳より僅かに高い程度なので労力はそれほどかからない。ここの山頂標識は古い様式のままだったが、そのうちに新しいものに更新されるだろう。できることならその時に真の山頂に標識を立ててもらえると有り難い。標識が今立っている場所は一段低い場所である。おそらく設置しやすさからこの場所になったのだろう。ここもガスがかかり始めて展望は悪化しており、立山方面の写真だけ撮影してマヤクボノコルへと戻った。

 コルで荷物を回収してアイゼンを装着してガスで視界が閉ざされたマヤクボ沢を下り始める。昨日のものと思われる比較的新しい足跡はカールの北側を巻くように続いているが、これだとマヤクボ沢上部の超急斜面を下ることになるので、いつものようにカールの底を目指す。少し高度が落ちるとガスの層を抜けて視界が開けてカールの形が見えてきて一安心だ。

 カールの底で進路を左に変更すると僅かに雪が切れてハイマツが出てしまっているエリアが登場。ハイマツが露出した幅は数mくらいで大きな障害にならないが、次回登るときにはもうこのルートは使えないだろうな。マヤクボ沢に出ると下方にスキーヤーの姿を発見。本日最初の登山者である。ここからだとまだ針ノ木雪渓は見えないのでそちらを登っている登山者がいるのかは確認できない。マヤクボ沢は東向きなので朝から日当たりがいいので雪の緩みは早く、下るのにはちょうどいいがスキーでの登りは少し厄介であろう。でも滑り降りるにはいい雪質のように思えた。まあ、私はスキーができないので正確なところは分からないが(笑)

 針ノ木雪渓が見えるようになると2人の姿を発見。あちらはマヤクボ沢ではなくそのまま針ノ木峠を目指す様だ。その後ろに2人組が見えるが、そちらも針ノ木峠経由らしくマヤクボ沢から離れた谷の東側を登っていた。

 ノドを越えて傾斜が一時的にきつくなると大ザックの男性が上がってきた。話を聞くと針ノ木峠に幕営して蓮華岳と針ノ木岳を振り分けて登るとのこと。テント場は一部が雪が消えている旨を伝えた。さらに下るとダブルストックにチェーンスパイクの男性が上がってきて、ノド付近以上の傾斜がこの先にあるのか質問された。足元がチェーンスパイクなので、今の雪のように締まっていない状態ではあまり役立たないのだろう。でも逆に言えばキックステップが効くのでアイゼンが無くても登れる状況である。それにマヤクボ沢出合を過ぎて谷の幅が狭まればステップが現れるのでさらに有利になる。あとは本人の雪上歩行技術によるだろう。そう言えばピッケルを持っているかどうかは確認しなかった。

 標高1900m付近から左岸に花が咲いていないか確認しながら下っていくと、まだ傾斜が急な岩場のかなり高い位置に黄色い花が咲いているのを発見。昨年の経験からおそらくミヤマキンポウゲと思われた。赤っぽい花はイワカガミだろう。サクラの花もあったがミネザクラでいいだろうか?

 左岸の傾斜が緩やかになって笹が目立つようになるとお目当てのシラネアオイが登場。3週間前も見たがシラネアオイは長持ちしない花であり、前回とは別の株が花を付けたのだろう。3週間前も見かけたオオバキスミレも健在だ。サンカヨウもたくさん咲いていた。籠川から夏道に移行する付近で花の撮影を行ったが、ここでは登りの2名が休憩していた。水もあるし時間的にもちょうどいい場所だろう。夏道の脇には早くもカラマツソウの花が咲いていた。他にベニバナイチゴ、アカモノ、ツマトリソウなど今年初めて見る花が多かった。ここは開けた草原状の南斜面で日当たりが良く、植物の生育が早いのかもしれない。

 切り立った左岸上部をトラバースしていくと、小さな岩場で苦戦している高齢夫婦らしき2人に遭遇。小さな装備しか持っていなかったので登山ではなく雪渓までの散策と思われた。ここで難儀しているようでは雪渓の比較的急な部分は登れないであろう。

 さらに下ると登りではなく下りの2人組男性を追い越した。私の所要時間から考えて蓮華岳か針ノ木岳のどちらかの山頂に立ってからの下山とは思えず、おそらく雪渓の途中で断念したと思われる。ザックにはピッケルは刺さっていなかった。

 大沢小屋に出て荷上げ道を下るか少し考えたが、もしスノーブリッジが無く橋も無かったとして、もう下山なので登山靴が水没してもいいだろうとの判断に傾き、体力&時間節約のため荷上げ道を下ることにした。今後の針ノ木岳登山に向けての情報収集の意味もあった。

 最初の道は沢状なので明瞭ではあるが笹のはみだしが昨年よりひどくなっているような。次回来た時に時間があったら少し刈っておくかな。途中には新しいピンクリボンの目印がぶら下がっているが、おそらく6月2日に実施された慎太郎祭の時に設置されたものだろう。目印があるということはその時はまだスノーブリッジが残っていて篭川を渡れたに違いない。

 笹が消えると登山道脇に花が見られるようになり、背が低く目立たないズダヤクシュと黄色いオオバミゾホウズキが一番多く、キジムシロの花も目立った。ヤマガラシは少数派だ。この他にタネツケバナも見られた。

 籠川の水音が大きくなって橋がかかっていた場所に来たが、悪いことに予想が当たって周囲にスノーブリッジは皆無だった。この時期に雪が無いのは初めてだ。雪解けシーズンなので沢の水量は多くて飛び石でも渡るのは無理そうだ。水に濡れた石を中継に入れれば渡れるが、目で見ても分からないがおそらくコケなどが付いて滑りやすい状態だろう。ここで滑ってコケたら流れが速くて深さがある場所なので全身びしょ濡れになってしまうだろう。それに電子機器類が水没して死ぬ可能性が高いので、ここでの渡渉はやめておくのが正解だろう。

 橋があった場所での渡渉は無理だと最初から分かっており、代案として上流に見えている砂防ダムの下流側で渡渉を試みることにした。砂防ダムから流れ落ちる水は流れの幅が広く堰堤から落ちた水は分散して流れているので、それぞれの流れの太さは細いはずだ。これなら渡りやすいだろうし、万が一滑って水没しても水深がごく浅いので被害が軽減できそうだ。

 上流へは道はないがまだ岸には雪が残っていて樹木が芽吹いていないので割と歩きやすかった。砂防ダム直下は案の定流れが分散して対岸に渡れそうであった。適当な石の上を歩いていき、最後の右岸に接する流れが一番幅が広かったが場所を選べば渡れそうだった。しかし驚いたことにそこにはアルミ梯子が簡易橋として横たわっているではないか! 今年は例外的に雪解けが早く、応急的にこのような処置を行ったのかもしれない。でもこれで正式な橋が架かる前でも荷上げ道が使えることが判明してラッキーだった。

 右岸も藪はまだ薄くて簡単に荷上げ道に出ると、まだかかっていない橋の部材(アルミ梯子等)が地面に置いてあった。これの出番は1ヶ月後かな。下流の堰堤には例年通りに長いアルミ梯子かかかっていて簡単に超えることができた。林道終点に出て下っていくとニリンソウはもう終わっているが、代わりにサンカヨウとキヌガサソウ、エンレイソウが咲いていた。先週見た白馬大雪渓下部のエンレイソウは葉が異様に小さかったが、ここでは普通サイズだった。さらに下るとネコノメソウが登場。まだ花が開いていないがそれも近いだろう。

 驚いたことに標高1560m付近の林道脇にはチングルマとミヤマクワガタが咲いているではないか! いくら冬場に雪で埋もれる沢沿いとは言え、こんな標高で咲いているのは見たことがない。登山者の靴底に種が付いてここまで運ばれたのだろうか。林道脇ではもっと後の時期にハクサンフウロを見たことがあり、3000m級の稜線で見かける高山植物が複数見られる珍しい場所だ。

 籠川本流の橋を渡るとベニバナイチヤクソウが目立つようになる。3週間前に蕾だったので下手をすると花はもうおしまいかと思ったら、逆に今でも蕾のままの株の方が多かった。蕾が出てから開花するまでに思ったよりも時間がかかるようだ。タニウツギは林道上部ではまだ蕾だったが下部では咲き出していた。

 舗装された車道に出るところでは林道入口脇に重機が止まっていて、右手の樹林が伐採されて河原で何やら工事をやっているようだ。林道の通行に支障はない。舗装された車道は3週間前はニリンソウとスミレが花盛りだったが今は全く見られず、キジムシロの花ばかりに変わっていた。車道から登山道に入る付近では背の低いミヤマキンポウゲとそっくりさんの群落あり。この標高ではウマノアシガタとの見分けが難しいが、ミヤマキンポウゲとしておこう。樹林帯の登山道脇ではまだタチカメバソウが咲いていた。

 下山で少し汗をかいたので次の車道に出る前に沢で軽く水浴び。夏以降は本流の流れは涸れているが、雪解けの今のシーズンはまだ水が流れていたので利用。扇沢駅裏手には数台の電気バスが止まったまま。おそらく乗客が少なくて台数に余裕があるのだろう。山も観光も夏シーズン前の端境期だ。

 登山口を通過して扇沢駅横の車道ではノビネチドリが咲いていた。そういえば往路の暗闇の中では登山道脇で見たなぁ。でもテガタチドリだった可能性もある。帰りも同じ道を下る予定で写真撮影していないのが残念だった。有料駐車場はガラガラで、これなら無料駐車場にも空きがあるかと思ったらその通りで、到着したらかろうじて数台の空きがあった。駐車場手前の連絡道脇ではオドリコソウにクサノオウの花。

 着替えて車に乗り込んで柏原新道登山口付近の駐車場を通過したが空きが目立った。まだ夏道は通れないのかもしれない。今年のこの時期では南尾根のジャンクションピーク付近は雪解けが進んで猛烈な藪だろうから、登山者が少ないのも当然か。


 今回の「体力テスト」の結果だが、雪上行動が長いうえに累積標高差約1800mでまだ余裕が感じられたので、完全無雪なら標高差1900mでも大丈夫そう。1900mは鹿島槍ヶ岳南峰のみの場合に相当するので、赤岩尾根上部の雪が消えてアイゼン、ピッケル不要になったら鹿島槍をやるかな。でもその前に梅雨入りして週末の天気が怪しくなる確率の方が高そうだ。予報では来週末(6月22/23日)は長野でも雨や曇りの予報で、広範囲で梅雨入りとなりそうだ。

 

山域別2000m峰リスト

 

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